当社グループは、事業目的に影響を与えるリスクについて、「リスク管理規程」を定めるとともに、リスクに適切に対応できる体制の整備を図るために「リスク管理委員会」を設置しています。「リスク管理委員会」はリスク管理規程にもとづき、具体的なリスクの特定・分析・評価を行い、その対応方針を定め、定期的に当社の取締役会への報告を行っています。また、委員会の委員長を当社の取締役が務めることで、事業との連動を更に深めた審議を行い、当社の取締役会に定期的に付議することとしています。
事業等のリスク
事業等のリスク
(1)リスク管理体制
(2)リスクマネジメントプロセス
当社グループは、グループ各社の経営戦略、社会的信用、顧客との信頼関係、適用対象者の個人情報、知的財産、設備施設その他の財産などに関し、日総グループ各社の事業目的の達成を阻害する可能性のある社内外の全ての事象をリスクと定義しています。また、リスクの的確な把握ならびに適切な管理の実行が、企業価値の持続的な維持、向上に繋がることであり、経営上の重要課題であると認識しています。
また、当社グループは、「リスク管理規程」に基づき、次の項目に関する協議を行い、取締役会の決議を通じて、各部門や関係会社に共有を、毎年行っています。
・ リスクの影響度を識別・分析・評価し、「リスクマップ」を作成・更新を行う
・ 緊急の必要がある場合は、適切に制御する必要対応を行う
・ 内容が社内外に開示の必要がある場合、速やかに開示する
当連結会計年度においては、事業等に影響を与えるリスクの見直しを重点的に行い、発生の確率、経営への影響度についての4項目の「特に重要なリスク」を特定しました。また、経営上のリスクとして5項目を特定、サービス別のリスクとして13項目を特定し、それぞれのリスクの低減や回避に向けた取り組みを進めています。
(3)特に重要なリスクと対策
項目 |
発生の確率 (注)1. |
影響度 (注)2. |
主な対策 |
賃金相場上昇による人員確保難・コストの増加 | 大 |
大 |
多様な働き口の確保と多様な働き方の実現、単価交渉の実施 |
外国人労働者の増加に伴う就業環境整備の不足 | 大 |
大 |
働き続けられる就業環境を整備する |
大型の取引先との契約終了・縮小に伴う社員の雇用維持 | 小 |
大 |
現職場以外での就業確率を上げるためのリスキリング、新たな取引先の拡大 |
レピュテーションリスク | 小 |
大 |
マニュアル整備の継続、教育の徹底、情報の継続的な監視 |
(注)
1.「発生の確率」は、大:年に1回以上発生、中:数年に1回発生、小:発生の頻度は少ない、として分類しています。
2.「影響度」は、大:連結業績に著しく影響(連結営業利益の30%減少、または連結売上高10%減少)を与える、中:経営計画の達成に影響を与える、小:経営に与える影響は軽微、として分類しています。
賃金相場上昇による人員確保難・コストの増加
当社グループは「人」の企業であり、人員確保コストや維持費用コストの増加は、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。このようなリスクに対応するために、給与体系の変更や人事制度の見直し等、多様な就業先の確保と多様な働き方の実現を進めてまいります。また、採用コスト及び賃金相場上昇分については、適切な単価交渉を行ってまいります。
(4)当社グループの経営全般
組織再編(企業買収、資本提携、業務提携等)のリスク
当社グループは、成長戦略の一環として今後も組織再編(企業買収、資本提携、業務提携)を行う可能性があります。事業環境の変化等の影響により、当初想定した効果を創出できない場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
個人情報保護について
当社グループは、求職者(求人案件応募者や職業紹介希望者等)をはじめとする多数の個人情報を有しており、この個人情報及び個人情報に係る全ての情報を事業運営上もっとも重要な資産であると考えています。当社グループでは、2005年4月に施行された個人情報の保護に関する法律を遵守し、個人情報保護理念・個人情報保護方針を定め、個人情報保護基本規程に則り、社内運用体制の整備、定期的な研修、情報管理の徹底強化等、個人情報の厳正な管理に留意しています。しかしながら、個人情報の故意又は過失による漏洩や不正使用などの事態が生じた場合には、損害賠償を含む法的責任を追及される可能性があるほか、社会的な信用を悪化させ、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
固定資産の減損について
当社グループは、事業用の資産として土地・建物等の固定資産を有しており、固定資産の減損に係る会計基準を適用していますが、今後地価の動向及び対象となる固定資産の事業の収益性状況によっては、減損損失の計上が必要となり、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
訴訟について
当社グループでは、必要に応じた教育機会を設けるなどして法令遵守を徹底しているため、訴訟、紛争の可能性は低いものと考えています。しかしながら、不測の事態により当社グループに関連する訴訟、紛争が発生した場合において、当社グループが的確に対応できなかった場合には、訴訟や損害賠償等による費用等の発生や社会的な信用低下、さらに当社グループのブランドイメージの低下により顧客からの受注の減少や就業希望者の減少が生じ、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
気候変動について
当社グループは、脱炭素社会への早期移行に向かい、21世紀後半の気温上昇を2℃とするシナリオに基づき、リスクと機会を特定しています。
(5)事業等におけるサービス別のその他のリスク
(総合人材サービス)
法的規制について
当連結会計年度における総合人材サービスの売上高は、連結売上高の97.0%を占めています。当サービスの中核である労働者派遣事業においては「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」、有料職業紹介事業は「職業安定法」に基づき、厚生労働大臣の許可を受けて行っています。また、製造請負事業においては、製造派遣との区分が明記されている「厚生労働省告示第518号(旧労働省告示第37号)」に基づいて事業を運営しています。そして、これら以外にも労働基準法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法、健康保険法、個人情報保護法等、多岐にわたる法律に基づいて事業を運営しています。
当社グループでは、法令遵守を経営の最重要事項と位置づけ、関係法令の教育、指導、管理、監督体制の強化に努めるなどして法令遵守の徹底を図り、上記の諸法令に抵触する事実はないものと認識していますが、万一、関連諸法令に違反するような事象や不正行為等が発生した場合には、所轄監督官庁による処罰や社会的に信用が失墜し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、これら関係諸法令は情勢の変化に伴い見直しが行われており、この法改正が行われた場合、その改正内容によっては、事業運営への制限の発生や対応する体制構築に時間を要することにより、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループの許可・届出状況 (2025年3月31日現在)
会社名 |
許可名称 |
監督官庁 |
許可番号 |
取得年月 |
有効期限 |
日総工産株式会社 | 一般労働者派遣事業 有料職業紹介事業 |
厚生労働省 厚生労働省 |
派14-150048 14-ユ-150026 |
2002年10月 2002年08月 |
2026年12月31日 2026年12月31日 |
日総ブレイン株式会社 | 一般労働者派遣事業 有料職業紹介事業 |
厚生労働省 厚生労働省 |
派14-020001 14-ユ-020011 |
1986年07月 2000年08月 |
2029年1月31日 2028年7月31日 |
株式会社ベクトル伸和 | 一般労働者派遣事業 有料職業紹介事業 |
厚生労働省 厚生労働省 |
派23-300331 23-ユ-300581 |
2005年09月 2008年07月 |
2028年8月31日 2026年6月1日 |
株式会社ニコン日総プライム | 一般労働者派遣事業 有料職業紹介事業 |
厚生労働省 厚生労働省 |
派14-303092 14-ユ-301602 |
2004年12月 2007年10月 |
2027年01月31日 2025年09月30日 |
株式会社アイズ | 一般労働者派遣事業 有料職業紹介事業 |
厚生労働省 厚生労働省 |
派13-011359 13-ユ-300065 |
2003年10月 2004年5月 |
2026年9月30日 2027年4月30日 |
日総ぴゅあ株式会社 | 有料職業紹介事業 | 厚生労働省 | 14-ユ-302260 | 2024年8月 | 2027年7月30日 |
なお、上記の許可・届出について、事業停止、許可取消及び事業廃止となる事由は労働者派遣法第14条及び第21条、並びに職業安定法第32条に定められています。本書提出日現在において、当社グループはこれら事業停止、許可取消及び事業廃止事由に該当する事実はありませんが、該当した場合には当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
取引先業種の景況による影響について
当社グループの売上高のうち製造系人材サービスの売上高が大半を占めており、取引業種別売上高の構成比をみると、自動車関連が最も高く、続いて電子デバイス関連が高くなっています。当社グループでは、事業展開にあたり企業、業種等による大きな偏りが発生しないように取り組んでいますが、依存度の高い業界の業況が不振となる、又は取引規模の大きい企業の大規模且つ急激な生産変動や当社グループとの取引に対する姿勢の変更が生じるなどの場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループが属する人材サービス業界においては、法改正や人手不足を背景とした業界再編の動きが見られます。今後、採用力や価格競争力の高い競合が増加した場合、競争が激化することが予想されます。当社グループでは、顧客からのニーズを把握し、そのニーズに応えるための人材を募集し、顧客に対して的確かつ迅速な対応を行うことで顧客満足度を高め、競合会社と差別化を図っていますが、受注を獲得するための過当競争が生じて受注価格の引き下げや人材を確保するための募集費用等が増加した場合、また必要な人員が確保できない場合には、売上機会の損失による売上高の低下や収益性の悪化により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
製造請負について
当社グループで行っている工場構内の製造業務を請け負う製造請負は、労務管理と顧客企業の製品の生産量や納期、品質あるいは設備、在庫管理といった領域の責任を自社で負っており、当社グループでは付加価値の高い製造請負サービスを顧客企業に提供してまいりました。これらの長年の取り組みにより製造請負事業改善推進協議会(厚生労働省委託事業)から当社グループは「製造請負優良適正事業者」として認定されています。しかしながら、製造請負は、不良品の発生や顧客企業の設備の破損等の責任を負わなければならないため、これらの事象が発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
労働災害等のリスクについて
当社グループの主たるサービスである製造系人材サービスは、取引先メーカーの工場構内において、製造派遣・製造請負を行っています。製造派遣は法律上、人材を取引先メーカーに派遣し、派遣した人員の指揮命令等の労務管理が派遣先に委ねられる形態となっています。一方、取引先メーカーの工場構内で行う製造請負においては、取引先メーカーとの業務請負契約により生産量、生産期限、品質及び取引先メーカーの備品を使用するにあたっての備品管理といった領域まで責任を負っています。
製造派遣の取引形態と製造請負の取引形態では、業務を遂行する社員及び製造スタッフが労働災害に見舞われた場合において責任主体が異なり、製造派遣においては取引先メーカーがその損害について責任を負うのに対し、製造請負においては当社グループが責任を負うこととなります。
労働災害に関しましては、基本的に労働保険の適用範囲内で解決されるものと考えていますが、当社グループの瑕疵が原因で発生した労働災害において、被災者が労働保険の適用を超えて補償を要求する等、訴訟問題に発展した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
自然災害について
当社グループの主な就業場所は全国の顧客工場ですが、当該地域において大規模な地震、風水害等の自然災害が発生し、就業先工場が被災したり、製品調達先の被災によりサプライチェーン上の混乱などが生じ、生産活動が停止又は制限されたりした場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、取引先における災害ではない場合でも、これらの災害が発生したことにより国内の経済状況が悪化してしまった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
取引先企業の情報の取り扱いについて
当社グループの就業者は、取引先企業の生産計画や新製品の開発及び製造に関わる機密性が高い情報に接することがあります。当社グループにおいてはこれらの機密情報の扱いについて、業務請負契約書や派遣基本契約書等に、知り得た顧客情報は第三者に開示、漏洩してはならないと記載されており、就業者に対しても顧客情報の取り扱いの教育を行うなど適正な運用管理を行っています。しかしながら、予期せぬ事態によりこれらの情報が漏洩した場合には、当社グループへの損害賠償請求や社会的な信用低下等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。